『アーロと少年』(原題: The Good Dinosaur)は、2015年に公開されたピクサー・アニメーション・スタジオの映画です。監督はピーター・ソーンで、恐竜が絶滅しなかった世界を舞台にした冒険ファンタジーです。
物語は、アパトサウルスの少年「アーロ」が家族と離れ離れになり、孤独な旅を通じて成長していく様子を描いています。旅の途中で出会う「スポット」という野生児の少年と友情を育みながら、困難を乗り越え、自分の恐怖と向き合うというテーマが展開されます。
この映画のユニークな点は、通常の恐竜映画とは異なり、もし恐竜が絶滅していなかったらという仮説のもとに、恐竜が知的生命体として進化し、農業や牧畜などを営む世界が描かれていることです。アーロの冒険は、家族、成長、恐怖に打ち勝つ勇気といった普遍的なテーマを扱っており、子供から大人まで楽しめる作品となっています。
また、映像美も高く評価されており、特に自然の描写や風景が非常にリアルで美しいことが特徴です。
「アーロと少年」のあらすじを起承転結で短くまとめ
起:恐竜が絶滅しなかった世界で、アパトサウルスの少年アーロは、家族と農業を営んでいるが、臆病で自信が持てない。
承:ある日、アーロは嵐に巻き込まれ、家族と離れ離れになってしまう。孤独な中、野生児の少年「スポット」と出会う。
転:アーロとスポットは様々な困難に直面しながらも、協力して旅を続け、友情を深めていく。
結:アーロは自分の恐怖を克服し、成長を遂げて家に戻り、家族との再会を果たす。
【起】「人間の子供」の現れ
物語は、恐竜が絶滅せずに進化し、文明を築いている世界から始まります。主人公のアパトサウルス、アーロは大きな農場を持つ家族の末っ子として誕生します。父親と母親、そして兄のバック、姉のリビーに囲まれ、家族は力を合わせて農業を営んでいます。
しかし、アーロは他の家族と比べてとても臆病で、どんなに頑張っても作業をうまくこなせず、恐怖心を克服できません。特に兄と姉は、早くから家族に貢献する力強い存在となっているため、アーロは自分が無力だと感じ、自信を持てないでいます。
父親はアーロに「何か大きなことを成し遂げて、自分の足跡を残すんだ」という教えを与え、アーロにも家族の一員としての役割を果たすことを期待しています。そんなある日、家族の作物を荒らす「人間の子供」が現れ、アーロはその子を捕まえる役割を任されます。この捕獲が、アーロにとって自信を得るための大きなチャンスだとされていました。
ところが、臆病なアーロはその子を捕まえたものの、恐怖に負けて逃がしてしまいます。この出来事が、後の冒険の引き金となるのです。
【承】父親の死と新たな仲間
アーロが「人間の子供」を逃がしてしまった後、父親は彼に「恐怖を乗り越えるための教訓を学ばせよう」と、荒れた天候の中、アーロを連れて川の近くへ向かいます。しかし、途中で激しい嵐が発生し、二人は危険な状況に巻き込まれます。父親はアーロを守ろうとしますが、洪水によって命を落としてしまいます。この突然の悲劇は、アーロに大きな心の傷を与え、自責の念と悲しみに打ちひしがれます。
父親を失ったアーロは家族の元に戻り、ますます自分の無力さを感じるようになります。ある日、アーロは再び家の近くで作物を荒らしている「人間の子供」(後の「スポット」)を見つけ、彼を追いかけます。しかし、追いかける最中にアーロは川に落ちてしまい、激流に流され、家から遠く離れた未知の場所にたどり着いてしまいます。
川のほとりで目を覚ましたアーロは、完全に迷子になり、恐怖と孤独に襲われます。そんな時、アーロが見知らぬ土地で最初に遭遇したのが、かつて作物を荒らしていた「スポット」でした。スポットは野生児で、言葉は話せませんが非常に賢く、サバイバル能力に長けています。最初は敵視していたアーロですが、スポットの助けを借りることで、少しずつ彼と打ち解けていきます。
スポットは食べ物を探し出したり、アーロを危険から守るなど、冒険の旅で頼りになる存在となります。二人は言葉が通じないながらも、互いに協力し、少しずつ友情を築いていきます。アーロはスポットを通じて、恐怖を乗り越え、困難に立ち向かう勇気を少しずつ学び始めますが、家に帰る道のりは依然として険しく、数々の試練が待ち受けています。
その中で、アーロは初めて「自分一人では生きていけない」ことを実感し、スポットと共に生き延びるための方法を学んでいくのです。この旅は、アーロにとって単なる家に帰るための道のりではなく、彼自身の成長の旅として進展していきます。
【転】「本当の強さ」とは?
アーロとスポットの友情が深まり、二人は冒険の旅を続けますが、困難や危険は次々と襲いかかります。二人はまず、暴れ牛を追いかける恐ろしいプテラノドンの群れと遭遇します。プテラノドンのリーダーであるサンダークラップとその仲間たちは、嵐の後に生まれる混乱や弱者を利用し、獲物を狙っています。彼らは一見助けるふりをしますが、実は非常に凶暴で狡猾です。アーロとスポットはこの危険な恐竜たちからなんとか逃げ出しますが、この事件を通して、アーロは本当の恐怖と危険を知り、さらなる試練に備える必要があると感じます。
その後、二人はティラノサウルスの一家、ブッチ、ラムジー、ナッシュと出会います。彼らは放牧する牛の群れを守るカウボーイのような存在で、荒野を生き抜く知恵と力を持っています。アーロとスポットはブッチたちと共に行動し、牛を捕らえようとする強盗のベロキラプトルとの対決に巻き込まれます。この場面でアーロは初めて、自分の恐怖に向き合い、勇気を持って行動する必要があることを理解します。ティラノサウルスたちの勇敢な戦いを目の当たりにし、アーロも一歩ずつ恐怖を乗り越え、自ら行動できるようになっていきます。
アーロは、この経験を通して「本当の強さ」とは何かを学び始めます。強さとは単に力が強いことではなく、仲間を守り、恐怖に直面しても立ち向かうことだと気づくのです。ブッチたちの影響で、アーロは以前の臆病な自分とは違い、自己を犠牲にしてでも大切な者を守る覚悟を持つようになります。
しかし、物語はここでさらに大きな転機を迎えます。アーロとスポットが再び旅を続けている最中、突然大きな嵐に見舞われます。この嵐は、アーロに父親を失った悲劇を再び思い出させるものです。アーロは激しい嵐の中、心の中で再び恐怖と向き合わなければなりません。過去のトラウマが蘇り、父親を守れなかった自分の無力さに打ちひしがれる瞬間があります。
そんな中、スポットが再びプテラノドンの群れに捕まってしまい、命の危険にさらされます。アーロは迷い、恐怖に足をすくませながらも、自分にできることは何かを必死に考え、ついに覚悟を決めます。「もう恐怖に負けてはいけない」と決心したアーロは、プテラノドンたちに立ち向かい、命がけでスポットを救出するために奮闘します。この瞬間、アーロはかつての臆病な自分を捨て去り、勇敢に自分と仲間を守るリーダーとして成長したのです。
【結】旅で得たモノとは・・?
アーロはスポットをプテラノドンの群れから救い出すことに成功します。嵐が吹き荒れる中、アーロは恐怖を克服し、命をかけて友を守る勇敢な姿を見せます。この出来事は、アーロにとって大きな成長の証であり、彼はついに臆病な自分を超えて、自信を持った存在へと変わっていきます。
その後、アーロとスポットは家に帰る道のりを再び歩み始めます。旅の途中で、アーロはスポットにとって家族がどれほど大切な存在であるかを理解する瞬間が訪れます。二人が移動する中、スポットは同じく「人間の家族」と出会います。彼らはスポットに似た人々で、互いに深い絆を持っていることが感じられます。この家族を見て、アーロはスポットに対する友情と保護者としての感情を抱きつつも、スポットが本当の家族と共にいるべきだと悟ります。
アーロは、スポットを家族のもとへ送り出すという辛い決断をします。彼は涙を流しながらも、自分のエゴを超えて、スポットにとって最良の選択をすることを決意します。この別れはアーロにとって非常に痛みを伴うものですが、彼は友の幸せを優先し、成長した証を示す瞬間でもあります。アーロとスポットは感動的な別れをし、スポットは新しい家族と共に新しい人生を歩み始めます。
その後、アーロは一人で家への帰路を続けますが、以前とは違い、自信に満ち溢れています。彼はこれまでの旅で学んだことや経験したことを胸に、困難に立ち向かう力を身につけました。そして、ついにアーロは自分の家に戻り、長い間心配していた家族と再会を果たします。家族はアーロの無事を喜び、特に母親は成長したアーロを誇りに思います。
アーロは、父親の教えであった「自分の足跡を残す」という言葉を心に刻み、自分も家族の一員として堂々と役割を果たせる存在になったことを実感します。臆病で自信のなかった少年が、成長し、恐怖を乗り越え、大切な者を守る勇敢なリーダーへと変わったのです。
物語は、アーロが家族の農場で自らの足跡を残し、父親との約束を果たすシーンで幕を閉じます。この結末は、アーロの内面的な成長と自己実現を象徴し、旅を通して彼が学んだ愛、勇気、そして自己肯定のテーマが感動的に締めくくられます。
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